ミステリアスな夜の吐く息が…

『黒革の手帖』、テレビドラマとして放映されるや否や、平凡な銀行員からやがて銀座のママへと大きな変身を遂げながら駆け上がっていくという、原口元子役の米倉涼子の迫真に迫る演技と、それを支える共演者たちの豪華な顔ぶれが、観る人の心をつかんで放さないほど脳裏に焼き付いてしまいました。

そしてついには明治座での興業にまで。休憩をはさんで4時間を超える大作の舞台。ドラマではなく舞台なので、場面関わるごとに銀行員の目立たない服装から次第に銀座に羽ばたく女の衣装へと次々と着替えていくところは、物語の進み具合と合わせて観甲斐がありました。

さて、どうしてこの小説がこれほど受けるのでしょうか。特に目立たない、わたしたちと同じ一介の銀行員、そしてふとタガが外れたことから、一気に飛翔の階段への入り口が見えてきます。あとは銀座という一番華やかな街が招いてくれるがままにです。そして最後の落とされ方。このアップ&ダウンの凄まじさが、夢と現実のギャップを引き離したり埋めたりしながら、強烈な羨望の思いを心のどこかに残していくのでしょうね。

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